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ミリタリーからヴィンテージ、コーヒーカルチャーまで!?独自の審美眼と多角的な視点でファッションを追求し、25年。『NEXUSVII.』今野智弘氏が語る、“ものづくり“の真髄|ネクサスセブン

いつものコーヒータイムにこだわりの道具や器が欠かせなかったり、はたまた緑に囲まれるため、わざわざクルマで遠くの自然へ出かけてみたり。なぜ人は、こうした時間やしつらえを求め、わざわざ手間ひまかけようとするのだろうか。そのヒントを探り、言語化するためのインタビュー連載。今回は、“装い”のプロフェッショナルの観点からお話をうかがうべく、「NEXUSVII.(ネクサスセブン)」ディレクター・今野智弘さんをインタビュー。ブランドを通じて四半世紀モノとスタイルを追求してきたファッションの探求者に、コーヒータイムの裏側にある時間がなぜ人を魅了するのか教えを乞う。

ファッションの枠を超えた、モノ作りの探求者

原宿の通称“とんちゃん通り”こと原宿通り。エリアのなかでもとくに老舗古着店などが軒を連ねることで知られるこの場所で今回訪れたのは、ショップ「NEXUSVII.」。2025年春にブランド名をそのまま冠しオープンしたこのショップを手がけるのが、ディレクターの今野智弘さん。2001年のブランド発足以来、ミリタリーやアメリカン・ヴィンテージをベースとした製品を多数展開。主力の「NEXUSVII.」のほか、デッドストックやヴィンテージなどの貴重な素材を駆使したライン「MADMAXX(マッドマックス)」や、米軍のレイヤリングシステムを独自解釈し、高機能素材を用いて再構築する保護服システム「NEX-WCS(ネクスワックス)」、さらには他ブランドとのコラボレーションやアーティストとの協業など、四半世紀にわたりストリートファッションの前線を走ってきた人物だ。

「いろいろなご縁があってこの場所に新たなお店を構えたのですが、結果的にブランドをはじめてから原宿・千駄ヶ谷一帯のこの場所を拠点にプロジェクトを展開してきました。特にこの場所では古着屋の先輩方が近くにいてくれるので、モノ作りの相談もしやすいし、自分のアイデア以上に新たな知見をもたらしてくれる環境でもあるんです。2026年にブランドが25周年と大きな節目を迎えるので、そのための仕込みもいろいろと進めています。飽きられず、毎シーズン新たなサプライズがあるブランドであり続けるためにも、人とのコミュニケーションや出会いもまた大きなデザインソースですし、プロジェクトの骨子にもなっています。そういう意味でもここは地の利があるというか、まだまだ学びの多い場所だと思っています」

製品開発の裏側に見える“濃度と深度”

国内外から多くのファンに支持される今野さんのブランドの魅力。それは単なるトピックス性やトレンドとの親和性のみならず、開発の裏側にある“濃度と深度”にある。表層的なデザインを抽出するのではなく、各国を巡り入手した古着をはじめとする膨大なアーカイヴをもとに徹底したリサーチを実施したうえで、当時の書籍や周囲のファッション関係者へのヒアリングなどを介してその製品を読み解き、ブランドとしてのスパイスを加え、現代のファッションアイテムとして昇華させていく。そのためには膨大な熱量と仕事量は言わずもがなであり、知識と造詣の探求、そして情報ネットワークが不可欠となる。そのことは、アイテム開発における“染める”という工程だけをとっても、作り込みの深さをうかがい知ることができるだろう。

「たとえば吉田カバンさんとのコラボレーションで作ったヘルメットバックなんかも、少し手が込んでいます。独特な淡い色をしていますが、これは日本で見られる野生のサクラの代表種・ソメイヨシノの花びらを集めて染料を抽出し、ふたつの特許技術のちからを借りてナイロン生地を染色しています。天然染めの場合バラなどで染めることもできるのですが、バラで染めたものは経年変化すると茶色くなってしまうんですね。そこで、いろいろな植物で試行錯誤した結果、ソメイヨシノで染めることを思いついたんです。もともと花の色が薄いのでうっすらとした色彩ですが、その繊細な感じがまた素敵かなって。水色の方は熊本県の県花・リンドウで染め上げたモノで、熊本の震災復興のためんい売上の一部を寄付しています。ほかにも、2024年に惜しくも倒れてしまった屋久島の弥生杉を加工してつくった粉をもとにした染料で染め上げたアイテムなどもあります。こうしたアイテムはセレンディピティというか、出会いがなければ作ることができません。自分の表現は、ほんとうにたくさんの方のサポートのうえで成り立っていると思います」

変化する情報の価値と向き合いながら、情報を掘る

デザインとしての美しさと機能性を叶える、圧倒的なまでの情報量。いわばアイテムの「説得力」を追求する今野さんにとって、クリエイティブを生み出すための情報はいわばガソリン。雑誌などのメディアからSNS、AIと、情報ソースが移り変わる昨今だが、情報の価値は身近なものへと変わっても、その情報を取りに行き深掘りするという姿勢は一切ブレていない。

「自分のモノ作りには、“そのひとのどこかに引っかかるポイントがあればいい”という頭があるので、おのずとレイヤーの数が多くなりがちです。でも、そのレイヤーを重ねていく工程が楽しいからこそ、ここまでやってこられたと思います。それと同時に、自分を取り巻く環境や周りの状況にもさまざまな変化が起きています。定番だと思っていたバッグが工場やメーカーさんの都合でもう作れなくなってしまったり、日本の伝統的な技術が後継者不足で途絶えてしまったり。そうした意味でも情報をキャッチし続けていないと、自分の理想の形が作れないといったケースも出てきてしまうわけです。本当にインプットの時間って大切で、情報が加速して手軽に手に入れられるようになった今こそ、もっとしっかりとアンテナを張らなければならない。情報そのものの価値も下がってきている時代、便利になった分、やりづらいと感じがちですが、ここで“情報を掘る能力”こそが、あらためて重要なんじゃないかとあらためて思いますね」

情報を掘る能力。このことは老若男女問わず、幅広いジャンルにおいて言えることだと今野さん。これはモノ作りをするひとが与えられた宿命ではなく、スタイルを追求するすべてのひと、すべてのライフスタイルに当てはまるという。

「ブランドのコンセプトで『Multiple Maniaxx & Technixx』を掲げている以上、自分がマニアックで居続けるって結構責任というか、プレッシャーですよ(笑)。でも、そんなことはお客様には関係なくて、生み出されるアイテムがいかにマニアックに作り込まれていて、それを気に入っていただけるかということ。もっと言えば、伝えたいのは自分のブランドの良さではなくて、モノ作りそのものにあるおもしろさなんですよね。入り口はバラバラでも、モノ作りの背景やストーリーの楽しさを知ってもらうキッカケとなれたら良いなと。そこには正解も上下もなくて、自分も皆さんも立ち位置は同じです。単純に、物事を掘り下げる習慣っていうのは、どの業界でも役に立つ大切なことかなと思うので。それはファッションでも、音楽でも、コーヒーでもいいと思う。情報を掘るという行為そのものが一石を投じることとなり、人との繋がりや新たな発見、身の回りの変化といったポジティブなことがらをもたらしてくれるはずですから」

コーヒーと、洋服のサンプルを手にする瞬間の共通点

何かをリサーチをする際、ひとつの起点を作ってから深掘りするという今野さん。その造詣はコーヒーに対しても深く、過去には自身でプロデュースした移動式コーヒースタンド「VLACK COFFEE(ブラックコーヒー)」を展開。マンドリルをキャラクターに据えたグラフィックを制作し、140年以上の歴史を持つ米国の印刷店「HATCH SHOW PRINT」とポスターを制作したり、ルーツである千葉県の四街道市でスペシャルティコーヒーを扱う専門店「TABEI COFFEE」とコラボレーションの豆を作るなど、コーヒーカルチャーを多角的に捉えたプロジェクトにも取り組んできた。

「『TABEI COFFEE』さんとの出会いを機に掘り下げた結果として、『VLACK COFFEE』のプロジェクトがへと派生したわけですが、当時(7~8年前)は自分のなかでスペシャルティーコーヒーに対する熱がすごくて、『こんなにおもしろい世界があるのか』という興奮や楽しみをブランド化してお客様にも届けたいと思ってスタートしたものでした。いろいろな豆を飲み比べてみたり、手で挽いたまめと機械で挽いた豆を飲み比べてみたり、どっぷりとコーヒーの世界にハマっていた時期で、ひとくちに“コーヒー”といっても、それを取り巻くカルチャーやギア、ストーリーなど、その幅広さと奥深さに魅了されましたし、いまでもそこがコーヒーカルチャーのいちばん楽しい部分だと思っています」

取材の流れで訪れた行きつけのカフェ「Tas Yard」でコーヒーを飲みながら、そう教えてくれた今野さん。さまざまなワクワクをもたらしてくれるコーヒーカルチャーと、ファッションにおけるモノ作り対して感じているという、ある共通点についても教えてくれた。

「自分でブランドを立ち上げて、はじめて作ったアイテムに『BEASTY SWEAT』というフェイクファーを用いて作ったプルオーバーがあるんです。実は、これには元ネタがあって、『KODIAK(コディアック)』というメーカーのプルオーバーで、古着で買ってから気に入って、ずっと自分で着てきたアイテムでした。その一着をもとに、丈の長くしたりアームホールもちょっと太くしたりと、リデザインして誕生したのがBEASTY SWEATなんですが、そのサンプルが上がってきたときこそが、いちばん最初にモノ作りの楽しさを理解した瞬間でした。今でも覚えてますが、嬉しいを通り越して衝撃でした。それ以降もサンプルが届くの、毎回楽しみなんですよ(笑)。自分は普段ギャンブルをやらないんですけど、サンプルを開けるときワクワクがひと一倍すごいというか、人生にギャンブル性をもたらされた感覚。そして、そのギャンブルのようなワクワクを、新しいコーヒーを飲むときにも楽しんでいたりします。豆の状態で買うのに、パッケージだけだと味がわからないじゃないですか。自分の感覚で選んだ豆を自分で挽いて、ひと口目を飲むときのドキドキ感っていうんですかね。それがすごく楽しい。そんなちょっとしたドキドキをくれるところもまた、コーヒーが人を魅了するところなのかもしれませんね」

NEXUSVII.公式Webサイト


今野智弘/Tomohiro Konno

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「NEXUS1.」ディレクター
1977年・千葉県生まれ。2001年にファッションブランド「NEXUSVII.」を発足。「Multiple Maniaxx & Technixx」をコンセプトに掲げ、ミリタリーやアメリカン・ヴィンテージを基調に、過去から現在までのプロダクトを徹底的にリサーチ&分析したうえで製品へと落とし込むという、熱量の高いもの作りに注力。そうした活動が国内外からも注目を集め、これまでにさまざまなブランドやアーティストとのコラボレーション企画も展開している。バスケット・Bリーグ「アルティーリ千葉」のクリエイティブディレクターとしても活動中。